生い立ち

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生い立ち

時子は昭和の半ばある九州の田舎町で北原家の次女として生まれた。父の貞雄は厳格な性格だが遊び人で家にいる事は少なかった。母の加代は父の貞雄が働かないせいで家計を支えるために夜の仕事をして毎日小言ばかり言う人だった。二つ上の姉町子は意地悪な性格で時子はあまり好きにはなれなかった。時子は物心ついた頃にはとても孤独な性格だった。なぜならたまに帰って来る父貞雄は母の働いたお金を取り上げて遊びに行ってまた数日帰ってこなかった。母はなぜか姉の町子にばかり何でも買い与え時子は差別され毎日家の掃除やら洗濯やら家事も無理やりさせられる日々を過ごしていた。服もいつも町子のお下がりをきて学校に行っていた。家にいるときはいつも孤独で寂しかった。時子も姉の町子と同じように接して欲しかった。愛情が欲しかった。ある時母に時子はどうして私にばかりこんな辛くあたるのかと聞いてみた。すると信じられない言葉を言ってきた。「お前は可愛くない!憎い!お前なんか産まなけりゃ良かった!」と。悲しくてひとりで毎日泣いていた。毎日毎日泣いた。それでも母の言う事を聞いていればいつかは愛情を注いでくれるかもしれないと母のいいつけを必死になって聞いていた。しかしそれは報われる事はなかった。その頃から母の虐待が始まった。虐待は毎日のように繰り返し、更にエスカレートしていった。
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