1章 ファースト・コンタクト1 カウント13Days

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  「本日4月5日、午後4時の音乃木町の天気は全域で晴れときどき曇り。降水確率はどの地域でも10%未満です。いやぁ、午後もいい天気になりましたね。暑くもなく寒くもない。絶好のお散歩日和です」  おいまて、どこが「いい天気」で「お散歩日和」だ。私の眼前に広がる景色は、その10%未満を引き当てられて町民が右往左往している空模様だぞ。  いつもよりも1時間だけ早い帰路の途中。距離的には家と学校の中間地点なんだけど、そこにはブランコとシーソー、小さな東屋だけの児童公園がある。ちょうどココを通りかかったときに、突然の大雨に当たってしまった私は、この児童公園の東屋で雨宿りをしているというのが、今の状況。運が悪いんだかイイんだか、わからない。  東屋は四畳半くらいの大きさで、縦に潰れた立方体の上に四角錘の屋根が乗っているような見た目。立方体部分の縦向きの四辺が周りを支える柱になり、出入り口の一面を除いた縦向きの三面には壁とベンチが備え付けられている。四角錘の頂点から真下に伸びる一本の木が正方形の机のちょうど真ん中を穿ってこの建物の大黒柱になっていて、これを支えるように、天井側の面にはクロスに組まれた梁が伸びている。何人かの子供が柱を伝ってここに登って遊ぶのを見たことがあるけど、私は怖くてできない。今日は雨だからか、木製の東屋は柱も机もベンチも、みんな柔らかい感じがした。  雨宿りの相方はズボンのポケットに入るサイズの小さなポケットラジオ。不要物だから学校で出すとボッシュートされるけど、登下校中に聞くと楽しいので持ち歩いている。そんなわけだから、いつもはイヤホンをつけて聞いているんだけど、今日は東屋の机に放りだして、イヤホンをつけずに聞いている。公園には私以外の人は見えないし、雨音が強すぎてラジオの音もくぐもって聞こえる。たぶん誰にも迷惑をかけていないから大丈夫だ。他にも机の上には、濡れてしまったランドセルや、そこから避難させた教科書、自由帳、筆箱が散乱している。人が来たら片付けよう。  しかしこのニュース番組、町内にあるミニFM局のやつなのに、なんで頓珍漢なことを言ってるんだろう……まさか、違う世界線の音乃木町を放送しているとか……ってなわけないか。
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