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ミケットはランレベルを下げたくないようだった。玲はフランジャーの出力を不可逆な損傷が起きないギリギリまで下げてミケットに撃った。
黄色の光球がミケットに命中すると身体がひっくり返って、不随意的に手足を震わせた。
マシーニャの身体にとって痛みは損傷を指し示す数値でしかない。しかしショックが産み出す膨大なランダムデータは負荷となって苦痛を産み出す。
「玲、人を傷付けるのは……人じゃないからいいのか」
「父さんがそれを言う?」
「まあ、特にミケット君については、うちの子を女性型アンドロイドに改造した償いをしてもらいたいね。玲の提案に賛成だよ。私も解体を手伝おう」
意識を取り戻したミケットは日本の古き良き謝罪のスタイルである土下座をした。
「お願いします! 解体しないでください!」
「だから、それならランレベルを――」
「ランレベルですね! はい! 5にしました!」
玲はそれを確認するとミケットに接続してファイルのパーミッションと所有者を適切なものに書き換えた。玲が手を加えなければ、ミケットは自力で元に戻れるはずだった。
「……負けた。妾が……地球人に」
ミケットはがっくりとうなだれた。しかし玲にも父にもちょっとした哀れみや優しさはなかった。
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