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「玲、これで大丈夫なのかい?」
「たぶん、暫くは。本星にはミケットとして虚偽の報告をしてごまかそうと思う」
「地球侵略しに宇宙から来たアンドロイドなんて、警察に言っても通じないだろうしなあ……現時点ではこれが最善だと思うよ」
玲はやっと胸をなでおろすことができた。フランジャーをキューブに送り返した。外見より中が広いキューブの正式名称はアトラス時間反応次元改変装置だと玲は初めて知った。
キューブの格納庫にはいくつも武器や機材が収納されていて、今やそれらは玲が自由に扱うことができた。手軽なサイズのフランジャーもあれば、半径3キロメートルの範囲を焦土にできる爆弾も積まれている。
ミケットは茫然自失といった様子だった。その元に玲の父が歩み寄る。何をされるのかミケットは身構えたが、父はただしゃがんで語りかけただけだった。
「玲は地球を守ろうとしているけど、私にはどうでも良くてね。ただ家族が無事ならそれでいい。玲には手を出した。もし明音と覚子に手を出したら、その時に私はミケット君をスクラップにしよう。分かったね?」
マシーニャは身長も低く手足も華奢に見えるが、素体でも成人男性の頭蓋骨を叩き潰す出力がある。
それでも今の父には本当にミケットをスクラップにする力があるように見える。だからミケットは激しく首を縦に振った。
「それと、玲。困ってないなら好きにやりなさい。困ってたら私を頼りなさい。どんなになったって玲は私の息子だ。それじゃあ母さんに謝ってくるよ」
父は部屋を出た。玲もミケットを引っ張り立たせて自室に入った。玲は久しぶりに自室の椅子に座った。パソコンの電源はそのままで、自動的にスリープ状態に陥っていた。
彼がパソコンを復帰させると、組版処理システムの画面が表示された。参加予定の技術書展は明後日だった。
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