第1章

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 「これから高橋さんという人が、えりすを迎えに来る。高橋さんはいい人だ。ちゃんと暮らせるようになるまで、寝る場所と食べ物を用意してくれる。学校の勉強も、生活するための常識も教えてくれる。えりすは、今の仕事はもうしなくていい。勉強がひととおり身についたら、ちゃんとした仕事も紹介してくれる。君ならちゃんとできるね?」  あたしはじっとどんぶりの中を見ていた。  あたしのこれからなんてどうでもいい。それよりも、高橋さんが来たら相川さんは相川さんのおうちに帰るんだってわかった。きれいなおくさまがいるすてきなマンションに帰るんだってわかった。  「はい」  どんぶりの中を見ながら、あたしは返事をした。  ぽつん、ぽつん、とスープにわっかが広がった。  それからあたしはゆっくりのこりを食べた。のどがひりひりしたけど、ぜんぶ食べた。  マラソンの人たちは次々ゴールしては、みんながみんな道にたおれていた。
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