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A:ぷろろーぐ
――パンッ
突然、乾いた音がその空間に響いた。
頬へ衝撃を感じた少年は、驚きで声も出せないまま、目を丸くし相手を見る。
何が起こったのか、一瞬、分からなくて。
頬がヒリヒリジンジンと熱をもっていくのを感じて、ようやく『平手打ちされた』のだと気づく。
「はは、どうしたの、そんな顔しちゃって」
少年を床に組み敷き、頬を叩いた手をプラプラと振りながら、男は笑う。
「痛かった? でも、君がいけないんだよ、まどかくん」
「せ…んせ……、な、んで……」
「口で注意するだけじゃあ、大人の言う事聞かないでしょ。君みたいな子は、こうでもしないと身の程が分からないだろうからね」
まどかくん、と呼ばれた少年が、イヤイヤと小さく首を振る。うっすらと涙でぼやけた視界の先で、もう一度その手が高く高く上げられた。
影で暗くなった顔は、満面の笑みで溢れていて……。
「あっ…あ…………ッ!」
「君がイイコになれるように、先生も全力をつくさないと、ね」
その笑みと、物腰の柔らかい口調からは考えられないような衝撃が、再び頬に落とされた。
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