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「ほんとありえない! むかつく! なんの嫌がらせ?! 昨日も今日もさあ!」
ぎゃんぎゃんと不満をまき散らすまどかを他所に、聡史は深呼吸をした。
今日こそは。
今日こそは、仲直りするんだ。
そう意気込んで、……意気込んだはいいものの、勇気が出ない。
もう一歩、もう一歩だけ、目に進めばいいだけなのに。
仲直りするための、勇気が出ない。
そうしているうちに、今日は教室の前まで来ていた。
ボーっとしている聡史に、まどかはひとつため息をついて「朝練じゃないの?」と声をかける。
「え、あ、うん……」
「僕、教室いくから。朝練、がんばって」
ひらりとひとつ手を振って、声援を送られた。
たったそれだけの事だけど、聡史は心がグンと動いた気がした。
喧嘩中なのに、がんばって、と言ってくれるなんて。
やっぱり、まどかは優しい。
やっぱり、大好きだ。
このまま、仲直りできないなんて、絶対、嫌だ!
「まどか!」
背を向けるまどかの、その手首をつかんで、引く。
自然とこちらを向いた仏頂面のへの字口に、
「…………っ!?」
勢いのまま唇を重ねると、その目が大きく見開かれた。
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