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矢馬田まどかの、中学校生活2年目の滑り出しは最悪だった。
始業式は遅刻。クラス替えで唯一の親友とは離れ離れ。 先生に呼び出しくらってる間に、持ち込みが禁止されている携帯電話の着信音が職員室に響く。
笑ってごまかそうとしたのに、新担任は生活指導の先生だったこともあり、あっけなく没収。後に親へ連絡されてしまった。
「矢馬田の携帯は、学校でしばらく預かる」
という先生の言葉を聞いて、思わず「はあ? ふざけんなよ」と本音が出てしまって、更に態度が悪いと指導を受けるハメになった。
最悪だ。
最悪に最悪が重なると、極悪になるのかも。
「はあ……」
吐き出しきれないため息を、親友の前で吐くと、彼は心配そうな目でこちらを覗き込んだ。
「まどか、大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ、あのクソ担任。早く携帯返してくんないかな」
「はは、小野寺先生厳しいからね……しばらく大人しくするしかないんじゃない?」
「むう……」と頬を膨らますまどかをなだめるのは、親友の野嶋聡史だ。
聡史は、まどかの幼馴染。成績優秀、スポーツ万能、容姿平凡、コミュニケーション能力も人並みの、所謂『できるヤツ』だった。
逆に、まどかは……成績劣等、スポーツ平凡。意外と人見知りで、好きな人にしか懐かない為、逆に聡史にだけはベッタリと甘えていた。
容姿は、美人家系に生まれた為か、大きな目とスッとした鼻、セミロングの癖っ毛(最近はゴムで結っている)が女子を連想させるほど可愛い。
その可憐な姿に反し、他人をワザと遠ざける言動、時に煽るような態度の所為で、友人と呼べる相手を作るのを困難とし……新クラスには友人と呼べる人は誰も居なかった。
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