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「最悪なことって、続くよね……」
「まだ何かあったの?」
「いやさぁ……由詩お兄ちゃんと喧嘩しちゃっててさ……」
由詩お兄ちゃん、というのは、まどかの実際の兄ではない。
年上の恋人の呼び名である。由詩とは遠距離恋愛2年目。現在大学生の彼は、最近アルバイトをはじめたらしく、寝る前に毎晩していた電話の回数もめっきり減った。
恋人同士の喧嘩の理由なんてのは些細なものばかりで、小さな事が喧嘩に繋がるものである。
先に機嫌を損ねたのは、まどかの方だ。「もうしらない!」と電話越しで怒って、通話ボタンを切った。
……それ以来、由詩からの連絡はない。
もしかしたら、あの日、職員室で鳴り響いたのは由詩からの謝罪のメールだったのかもしれない、と思うと怒りがわいてくる。
タイミングが悪すぎる。ほんっと、最悪。ちょっとはこっちのコトも考えてほしい。と、まどかの中で由詩への理不尽な怒りが募っていった。
「まじかー、大変だな、まどか」
「聡史くんが居なかったら、僕、もう学校辞めてると思う~」
「いや、中学は義務教育だから……」
「わかってるよぉ」
再び、頬を大きく膨らませ、まどかはぷいっとそっぽを向いた。
あーあ、やだな、こんな学校生活。つまんない。と、まどかはぼやく。
聡史とはクラスが離れてしまい、クラスメイトの名前は全く分からず、担任には目つけられ。携帯は没収。
更に……由詩とは、喧嘩中。
でも、学校を休むと親がとやかくうるさく言ってくるので、遅刻はするものの、サボリはしなかった。
めんどくさい日は保健室に登校、授業中に居眠り。先生の話は聞かない、クラスには馴染まない。
矢馬田まどか、という生徒の評判は、先生たちの間でも取り上げられ、あっというまに『問題児』のレッテルが貼り付けられてしまったのだった。
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