B:わるいこ

3/8
前へ
/180ページ
次へ
「最悪なことって、続くよね……」 「まだ何かあったの?」 「いやさぁ……由詩(ゆうた)お兄ちゃんと喧嘩しちゃっててさ……」  由詩(ゆうた)お兄ちゃん、というのは、まどかの実際の兄ではない。  年上の恋人の呼び名である。由詩とは遠距離恋愛2年目。現在大学生の彼は、最近アルバイトをはじめたらしく、寝る前に毎晩していた電話の回数もめっきり減った。  恋人同士の喧嘩の理由なんてのは些細なものばかりで、小さな事が喧嘩に繋がるものである。  先に機嫌を損ねたのは、まどかの方だ。「もうしらない!」と電話越しで怒って、通話ボタンを切った。  ……それ以来、由詩からの連絡はない。  もしかしたら、あの日、職員室で鳴り響いたのは由詩からの謝罪のメールだったのかもしれない、と思うと怒りがわいてくる。  タイミングが悪すぎる。ほんっと、最悪。ちょっとはこっちのコトも考えてほしい。と、まどかの中で由詩への理不尽な怒りが募っていった。 「まじかー、大変だな、まどか」 「聡史くんが居なかったら、僕、もう学校辞めてると思う~」 「いや、中学は義務教育だから……」 「わかってるよぉ」  再び、頬を大きく膨らませ、まどかはぷいっとそっぽを向いた。  あーあ、やだな、こんな学校生活。つまんない。と、まどかはぼやく。  聡史とはクラスが離れてしまい、クラスメイトの名前は全く分からず、担任には目つけられ。携帯は没収。  更に……由詩とは、喧嘩中。  でも、学校を休むと親がとやかくうるさく言ってくるので、遅刻はするものの、サボリはしなかった。  めんどくさい日は保健室に登校、授業中に居眠り。先生の話は聞かない、クラスには馴染まない。  矢馬田まどか、という生徒の評判は、先生たちの間でも取り上げられ、あっというまに『問題児』のレッテルが貼り付けられてしまったのだった。
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

644人が本棚に入れています
本棚に追加