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「こら! 矢馬田、なんだ、その恰好は!」
ある日、当たり前のように遅刻して、教室の後ろの扉を気を遣う事なく開けたまどかに対して、担任の小野寺が声をあげた。
この中学校の制服は学ランなのだが、まどかは前ボタンを全開にして、インナーは派手な色のTシャツを着ていた。
校則違反を堂々とやってのけるまどかに、小野寺は厳しく指導する。
しかし、まどかはケロっとした様子で……
「そんなにカリカリしちゃって、カルシウム足りてないんじゃないの?」
と、煽るようにニンマリと笑ったのだった。
「オニ寺先生の怒鳴り声、A組まで聞こえてきたよ。『やまだぁぁあーー!!』って」
「あはっ、ほんとに? うける~」
昼休み、まどかは聡史の教室を訪れていた。壁際にある聡史の前の席に、身体を横向きにして座って、背を壁にくっつける。
担任小野寺は、生活指導の先生でもあり、その厳しさと厳つさから『オニ寺』というあだ名もついていた。
A組とE組、つまり4クラスも離れた場所にまで担任の声が響いていたなんて。ついでに、名字を大声で叫ばれた為、まどかはあっという間に有名人と化した。
「服くらいで、いちいち煩いよね~、着てるんだからいいじゃんね?」
「でも、学校で決められた服装だし、ちゃんと着た方がいいよ」
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