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聡史の返事に、まどかの顔が少し曇る。
自分の意見を肯定してもらえない、という些細なことが『自分を否定されている』ように過敏に感じてしまっているのだった。
「そーだよねー。優等生クンには、考えらんないだろーね。劣等生のやってることも、考えてることもー」
「ま、まどか……」
肩を落とすように小さくため息をついて、頬に手の甲を当て、聡史の机に肘をつく。聡史は困ったように眉を八の字にして、不機嫌そうなまどかの顔を見つめる。
「いいですいいです~、どーせ僕は劣等生の問題児ですよーだ。優等生の聡史くんが、僕なんかと一緒にいたら、評判悪くなっちゃうかもしれないし? 僕なんかと居ないほうがいいんじゃない?」
「おい、まどか、そんな言い方すんなよ!」
不貞腐れたまどかの言葉に、聡史は少し声を荒げた。
でも、言葉が止まらない。
言いたくない、言ってはいけないような、言葉が。
嫌な気持ちが、嫌な言葉に変換されて口から吐き出されていく。
「はあ? なに、僕が間違った事言った? 聡史くんも、本当は僕とつるむの嫌になってきてんじゃないの? 自分も問題児って思われたくなくって、面倒ごとになったら嫌だなとか、思ってんでしょ」
「そんなこと思った事ねぇよ! まどか、お前、最近おかしいぞ!」
「おかしい? なにそれ、やっぱり僕の事、そんな風に思ってたんだ。聡史くん最低。僕が嫌いになったなら、そう言えばいいじゃん」
「ちがっ……オレはっ……!」
――バンッ!!
聡史の言葉を遮るように、大きな音を立ててまどかは机を叩いた。
同時に立ち上がって、キッと聡史を上から睨みつける。
突然した大きな音に、そのクラスにいた他の生徒の視線が、一気にふたりに注がれる。
変な沈黙が流れて……
「もう絶交だから」
氷柱のように鋭く冷たい声で、聡史を真上から突き刺した。
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