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彼女は男を担いで森林の頂上へと足を進めた。
瀕死の男をそのまま置いておくわけにはいかなかったからだ。
背中に暖かい血を感じながら頂上に達したとき、息を引き取った男の身体を地面に置いて道端に落ちていた枯れ枝で十字を作り、男の顔に置いが、何度試しても枯れ枝はバランスを崩してうまく乗らなかった。
事が落ち着くと、今度は自分の震えが止まらなくなったのだ。
殺人はいけないことなのか。正当防衛はどこまで認められるのか。
家族は、友人は、将来は。
明日からはもう日常が戻ってくることはないかもしれない。
しかしまた、太陽に憂鬱を感じる必要もないかもしれない。
森林の入り口には、すでに男が携帯で呼んだ仲間たちが声を出して捜索を始めていた。
先ほど上ってきた道とは反対側から下り、逃げなければならなかった。しかし、そうするにはあまりにも月がきれいだった。
だからもう少しだけ見上げておこう。
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