30.旦那様の幼馴染み、が

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 役割分担が決まると、エスメラルダさんは文字通りにお兄さんを片手で引きずっていき、サイラ君はフィナンシェを持ったまま後に続いていく。 「エイマーさん、あの方は?」 「ん? ああ、冒険者だと聞くと……やはり気になるかい?」 「少し……」  まだ、資格を所持したままでも、もう冒険者であるつもりはない。  実際のところ、ポーションが作れる錬金術師じゃなかったから、討伐なんかの実戦で役に立つことも無理。  だけど、まだそこから離れて半月も経っていない。  気にしてしまうのも、無理がないと言うか。 「知りたがる事は悪いことではないぞ? 彼はこの屋敷にはよく来るんだ。貴族ではないんだが、旦那様とは幼馴染みのような間柄でね?」 「旦那様、の?」 「父君が有名な傭兵だったからなのと、大旦那様の護衛を長く務めている関係さ。彼も、腕の立つ戦士(ファイター)として修行中なんだ。今はソロと聞いているが」  レクター先生は、幼馴染みと言っていいけれどあくまで乳兄弟だから、従者関係。  実際は砕けた付き合いをしてても、それはカイルキア様が寛容なお陰。
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