1291人が本棚に入れています
本棚に追加
*・*・*
二日前のことだった。
私が、パーティーの雑用をいつものようにこなしているとリーダーのマシュランに呼ばれたのは。
「チャロナ、今少しいいか?」
「なぁに? マシュラン」
雑用はいつもの事。
レベルは悪くなくとも、不適正なのかポーションがうまく作れない私にとって、料理や洗濯はいつもの事。
その日も、野営地で炊事をしてる途中だった。
「…………その、非常に言いにくいのだが」
労いとは違う、決断に満ちた言葉。
それだけで、私はある事を理解した。そう思ってから、鍋をかき回してたおたまの手を止める。
「……なんとなく、言いたいことわかるよ」
私がそう言えば、マシュランから息を飲む音が聞こえる。
もうほぼ、答えに近かった。
だから、私は何も言わずに彼の言葉を待つ。
「…………すまない。パーティーのためだ」
見ずともわかる。
そよ風よりすこ強い風の流れを受けたことで、マシュランが私に向かって初めて腰を深く折った事を。
「……明日、でもいい? 最低限の身支度はしたいから」
拒否権がなくとも、それだけはしたかった。
さすがのマシュランもそれだけは頷いてくれ、私は翌日いくらかの謝礼金のようなのを渡されてから、二年は在籍してたパーティーを抜ける形になったのだ。
「皆、笑ってくれたらよかったのに……」
だいぶ離れた森の中に着いてから、私は彼らの別れ際を思い返した。
どのメンバーも、結局はリーダーのマシュランも、皆泣きそうな顔をしていたのだ。
パーティーとしての連携、同行などを考慮すれば、二年もほぼ雑用係だった弱過ぎる錬金術師など役立たずに等しい。
それを、家政婦のように身の回りの世話がなんとか出来るから、居させてくれた。
でも、それも時間が経てば考えは変わってくる。
最初のコメントを投稿しよう!