0.まず抜けさせられた

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(他の皆が強くなってるのに、私だけ全然じゃ意味がないもの)  錬成も、戦闘術も。  大して成長しないお荷物。  自覚はしてたから、いつ言われるかなとは片隅に思ってはいた。それが、昨日になっただけ。  なのに、メンバーの皆は悔やんでくれた。  せっかく吹っ切って旅立とうとしたのに、彼らの前で笑顔になれたか自信がない。 「さって、次の街でギルド行ってー……適性検査し直さないと」  謝礼金だって、大した額じゃない。  でも、あるだけマシだ。  もっと雑な扱いをするパーティーなら、身包み剥いで追い出すとかも、風の噂で聞いた事があるくらいに。  あそこが、優しい人達で良かった。それだけが、救いなのだから。 「……っと、うっわ! 真っ黒い雨雲!」  ひたすら森を歩いていたら、嫌な事に雨雲と遭遇。  しかも、スコールがすぐそこまでってくらい最悪の色をしていた。  山中程天気が変わるものはこれまでの冒険者業で培っていたが、油断し過ぎ。  とにかく、急いで雨宿り出来そうな場所を探すのに走ったが……もう遅い。  走った途端に降り始め、一瞬でびしょ濡れになった。 「最悪!」  食料はカバンの奥にしまい込んでても、きっとすぐに雨水が染み込んでしまう。  同様に服やとりあえず所持してる錬成用の道具なども、水に濡れては大変だ。  足を止めずに走り続け、洞窟か大木のウロを探すもただでさえスコールなために視界が良好であるわけがない。  走っても走っても影になるような場所も見えず、靴もどろや水が入ってきて二重の意味で最悪。  いっそ脱いでしまおうかと思った時。  私は、足を踏み出しただけなのに体が宙に浮いた。 「じゃな……落ちてっ!?」  それがわかった時には、メンバーのレイアのように浮遊魔法が使えたらと思った。  だけど、私は魔力も底辺の錬金術師だったからそんな芸当出来るはずがない。 (ああ、ほんとお荷物だったな……)  このまま死ぬかと思うと、今までの出来事を振り返るよりも先に、それがすぐ思い浮かんだ。
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