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返事をしていいか迷ったが、ひょっとしたら声が外に聴こえていたかも。寝てる相手になら、ノックする必要もあまりないだろうから。
私は、少しだけ深呼吸をしてからゆっくり口を開いた。
「はい、起きてます」
「あら、良かったわ!」
声と共に扉が開くと、そこに居たのはハウスメイドらしい使用人の女性。
嬉しそうな声色と同様に、薄青の瞳はキラキラと輝いていて、私を見ると目尻を緩ませた。淡いクリーム色のまとめた髪が特徴的な、優しい印象がにじみ出てる綺麗な人だ。
拾ってくれた人かはわからないが、手当てなどはほとんどこの人がしてくれたはず。彼女の腕の中には、救急箱があったからだ。
「旦那様がお連れになってから寝込んで、もう三日目だったのよ。少し心配だったけれど、気がついて良かったわ」
「み、三日??」
「ええ。大丈夫、まだ傷口も完全には治ってないからゆっくりしてっていいわよ」
前世じゃまずお目にかかれなかった本物のメイドさんは、私がベッドから降りなうように手で制してからこっちに来た。
救急箱をサイドテーブルに一度置き、ためらいもなく私のおでこに綺麗な手を当ててから、うんと頷く。
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