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「急病人が運ばれてくることは珍しくないから、逗留については気にしなくていいわよ? 身分を問わず、旦那様はとてもお優しいから」
「そ、そうですか……」
こちらにはありがたいことばかりだが、よくあるのなら深くは追求しないでおこう。
「二つ目。身の回りの世話については、主に私を含めるハウスメイドがしてたから安心してね。はい、交換終わり」
「ありがとうございます」
傷については、大きな裂傷はないらしく表面の皮膚が少し切れただけらしい。
だけど、血は結構流れてたから痛むのも無理ないそうだ。
「三つ目。熱は、屋敷に常駐してる魔法医者が診てくれたわ。肺炎じゃないけど、雨に打たれ過ぎたのとストレスで高熱が出たみたい。それで、三日も目を覚まさなかったの」
「……ストレス、ですか」
ため込んでるつもりではなかったけど、あの時は昨日の今日で脱退を宣告されたから、無理に取り繕おうとはしていた。
それと、落ちた直後に蘇った記憶達。
今もまだ少し混乱はしてるが、意識の中では大変だったのだろう。むしろ、熱だけで済んで良かった。
「荷物は調べさせていただいたけれど、冒険者だったのね? それなら、ストレスもあって無理ないわ。旅をしてるのなら、命がけだもの」
「い、いえ!」
違う。
私は、チャロナは、ちゃんとした『冒険者』じゃなかった。
「私は……よ、弱過ぎる、冒険者でした!」
「チャロナちゃん?」
褒められるような事など、何もしていない。
あのパーティーに加入したばかりの頃は、採取関連の依頼中心をこなすのが日常だった。
パーティーのメンバーにもそれでいいと言われたけれど、初心者ではなくなってからは討伐や護衛依頼が増えて来て、その時は大抵その街のギルドでお留守番。
よくて、最近までしてたような炊事などの雑用係。
家政婦かと他のパーティーに間違われてた時期もあった。
本当に、試験で認められた錬金術がうまく使えず、知識を詰め込んだだけのお荷物。
そんなストレスを、私は初対面のメイミーさんに、全部伝えてしまった。
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