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十月中旬。神央学園高校、体育祭の日。
体育科にとっては、普段交流のない普通科の女の子にアピール出来る絶好のチャンス。野球部のメンバーも例外ではなかった。多くの女子生徒の前で良いところを見せたいとみんな気合が入っていた。
ただ、前園のように全く興味のない人間もいたが。
「おっ、あの子可愛い」
「どれどれ……。そうか? それならあっちの子の方が可愛いくねぇ?」
野球部のメンバーが普段見たことのない普通科の女子を目の前に、各々勝手に盛り上がっている。その話題は前園にも振られた。
「前園はどの子がタイプ?」
「興味はない」
間髪入れず彼は答える。表情一つその様子に仲間は肩をすくめた。
「さすが、もてる奴の言葉は違うねぇ」
実際の所、前園には興味がなかった。あるのは野球だけ。神央だけでなく他校の生徒からもファンレターをもらうが、読んだ事すらなかった。
「次、二年生女子だってよ。あの噂の子出るんじゃない?」
次は女子が浴衣を着て登場する種目だ。野球部のメンバーは一斉にグラウンドを見た。
「どの子だ?」
「おい、よく見えないよ」
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