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彼と彼と彼女の出会い①
季節は秋。九月某日は透哉の誕生日だった。
まだ付き合いだして間もない二人は、時間を見つけては連絡を取り合い、毎日を謳歌していた。ただ、透哉は野球部の新キャプテンとして高校野球の秋季大会も始まっており、部活の忙しさに拍車がかかっていた。
正直、二人が会える時間はかなり少なかった。
今日もせっかくの透哉の誕生日だが、部活が忙しく会えそうもなかった。日付が変わる前におめでとうだけでも言いたいと、楓は透哉に電話をかける。
『もしもし、楓どうしたの? こんな夜に』
何か特別の用事かと透哉は不思議そうに尋ねる。
「疲れてるのにごめんね。でもどうしても伝えたかったんだ。誕生日おめでとう」
『え? あ、そっか今日僕の誕生日だった。忙しくてすっかり忘れてたよ、ありがとう』
透哉は嬉しそうに答えた。
そう言えば忙しくて自分の誕生日を忘れていた。彼は最近、部活の事で頭がいっぱいだった。秋季大会の結果次第で来春の選抜出場が決まる。気の抜けない毎日だった。
あ、そうだと楓は話題を変える。
「来月は体育祭だね、透哉はどれに出るの?」
秋季大会が終わった後の来月中旬には体育祭がある。透哉の出る種目を見ておきたくて楓は尋ねた。
『体育科だからね。体育科の競技はほとんど出るけれど、リレーは絶対勝ちたいな』
「応援するからね、頑張って」
透哉も楓に尋ねる。
『楓は何に出るの?』
「えっと、二年生女子の種目は全部と、あとほら浴衣の……」
この高校では、二年生の女子が浴衣を着て踊るというちょっと変わった演目があった。競技ではないため得点には関係ない。競技の間の中休みと言った感じだろうか。楓も浴衣を着て出ることになっていた。
『ああ、あれに出るんだ。楓の浴衣姿、楽しみにしているよ』
それからたわいもない話をしていたが、透哉も朝練があるというので「おやすみ」と電話を切った。
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