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前園はこの時、簡単に彼女が手に入ると思っていた。そしてある程度、どう努力すれば良いかも理解していた。
だが世界は彼が思うほど甘い物ではない。何より他人の気持ちだけは、そう簡単にたやすく動かせるものではないのだ。
前園がそれを思い知ったのは、もう少し後になってからだった。
「あれ? そう言えば佐竹は?」
みんなで盛り上がっている時に、彼の姿が見当たらない。
「ああ、佐竹ならさっき普通科の女の子に囲まれてキャーキャー言われていたから、どこかに避難したんじゃないか?」
「えぇなぁ。前園もキャーキャー言われるけど、お前は怖いからな。みんな近寄れないんやろうなぁ」
安西が冗談交じりに言ったが、前園の耳には届いていなかった。
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