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彼女達が通う神央学園高校は、全国でも有名な野球の名門校。今年の夏も甲子園に出場し、生徒達は連日夏休み返上で野球の応援に駆り出されていた。
結果はベスト16だったものの、学校中のみならず巷の話題は野球部一色だった。
夏休みは何処にも行けなかったとぶつぶつ言う親友の声に、楓はシャープペンシルを置いて顔を上げ、溜息をつく。
「涼子はまだ良い方でしょうが。学校に来ても彼がいるから」
楓の言葉に、頬を膨らませていた涼子は口元を緩ませる。
「まぁ、そうなんだけど。ねぇ、隼人ったらこの前も試合でシュート決めたんだよ」
隼人というのは涼子の彼氏だ。なんでも二年生ながらサッカー部注目のストライカーらしい。
「へぇ、すごいね。涼子の応援があったから頑張ったんじゃない?」
「まぁねぇ。声が枯れるくらいに応援したんだから。でも、うちの高校、野球以外はさっぱりでしょ? 隼人だって頑張っても地区予選すら危ないし。だいたいサッカー部の試合に、誰も応援に来ないってどういう事よ」
隼人だってあんなに練習しているのになぁと嘆く涼子に、楓がまぁまぁとなだめる。
「仕方がないよ。うちの高校、野球部以外は成績がぱっとしないんだから。それに涼子の彼だって、部活をするためにここに入った訳じゃないでしょう。野球部だけは特別なんだって。あの人たちは野球をするために、ここへ来たらしいから」
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