彼と彼女の出会い①

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 その日の夜。 『プルルルル……』  楓がスマホに目を向けると、知らない番号が表示されている。誰だろう? と通話ボタンを押した。 「はい……もしもし」 『あの、佐竹透哉なんだけど』  その名前に楓は一瞬固まり、姿勢を正した。 「今日は本当にすみませんでした」 電話にもかかわらず深々と頭を下げる。 『いや、僕も悪かったんだ。僕が咄嗟に避ければ、君だって転ぶことなかったのにごめんね』  楓の予想に反して、相手は優しい口調で答えた。 「いえ、そんな。ぶつかったのは私ですから。荷物大丈夫でしたか? 派手な音がしていたし」 『ああ、大丈夫だよ。それより飛鳥さん怪我はなかった?』  相手は楓の心配ばかりしている。 「ええ、大丈夫ですよ」 『良かった。怪我でもしていたらどうしようかって心配していたんだ』 この人、優しいんだ……かなり文句を言われるだろう覚悟していた楓は少し安心した。体育科の野球部、それも噂の人物とあれば、高慢で俺様的な人物を想像していた。 壊れた物を弁償するだけでは足りず、もしかしたら、慰謝料まで要求してくるかもしれない。そこまで覚悟していたのだが、予想に反して相手は優しい口調で楓の心配ばかりしている。  ホッとしている楓に佐竹透哉は続ける。 『あのさ、ところで飛鳥さんて良く図書室にいるよね』  その言葉に少し考える。この人、どこかで見たと思ったら、最近図書室で見たんだと楓は気がついた。 「えっと、あなたも居ますよね図書室」 『ああ、僕も本好きなんだ。突然なんだけど、明日良かったら図書室で会わない?』  楓も会ってきちんと謝っておきたいと思ったので頷く。 「いいですよ。でも私、部活があるんですけれど」 『それなら大丈夫だよ。来るまで待っているから』  相変わらず優しい口調で佐竹透哉はそう言って「じゃ、また明日ね」と電話が切れた。
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