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彼と彼女の出会い②
翌日、予想外に部活が長引いてしまった楓は、慌てて図書室へ向かっていた。
「うわーすっかり遅くなっちゃった」
部活で着ていたテニスウェアのままカバンを手に持ち、中へと入る。
「ごめんなさい、遅くなっちゃって」
昨日派手にぶつかった相手は、気にする様子も無く本を読んでいた。
「別にいいよ。それより飛鳥さんてテニス部なんだ」
彼は本から顔を上げて、楓を見る。
「ええ。あれ、佐竹さんは確か野球部じゃ……野球部なのに図書室でのんびりしていて良いんですか?」
「透哉でいいよ。知っていてくれたんだ、光栄だな。甲子園が終わったからね、今日は練習が休みなんだ」
彼は立ち上がり本を鞄にしまった。
「ここじゃなんだから外に出ようか」
確かに図書室で話すのは周りの迷惑になる。
「そうですね」
佐竹透哉は校内では有名人だ。廊下で立ち話でもすれば、みんなの注目の的である。
透哉は図書室を出ると廊下の突き当たりにある階段を指差した。
「あそこから屋上に出られるんだ。屋上でも良いかな」
「はい」
返事をして楓は透哉の後を歩く。二人はそのまま屋上に行った。
「この前はホントにすみません」
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