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屋上に着くなり楓は頭を下げた。
「いいよ気にしないで、僕も不注意だったんだ。飛鳥さんに怪我が無くて良かったよ。女の子に怪我させちゃ大変だからね。ほら、頭をあげて」
「はぁ。でも、荷物割れましたよね」
楓は頭を上げて透哉の顔をまじまじと見た。
キャッチャーと聞くと、何故だか身体が大きく顔が四角い、昔の野球アニメに登場する人物を想像してしまいがちだ。しかし、目の前にいる佐竹透哉の外見は、それとは程遠かった。
かなり鍛えてはいるのだろうが見た感じは細身だし、長いまつげに整った顔立ち。柔らかそうな栗色の髪。みんなの噂通り、確かに彼はアイドルのような甘いマスクだった。同級生達が騒ぐのも頷けた。
「ああ、あれね。知らない子にプレゼントをもらったんだ。『私とお揃いのマグカップです』って言われて、捨てるわけにもいかずにちょっと困っていたんだ。あの子には申し訳ないけど、割れてちょっと助かったかな」
ばつが悪そうに透哉が笑った。楓はその顔からも目が逸らせなかった。
「飛鳥さんにそんなに見つめられると照れちゃうよ」
まじまじと彼の顔を見ていた楓に、透哉は優しく微笑んだ。
「あっ……す、すみません」
楓の顔が赤くなった。
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