彼と彼女の出会い①

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彼と彼女の出会い①

     それは蒸し暑い午後、八月末の出来事。猛暑だ、酷暑だと連日のように騒がれているこの夏の終わりは、いまだに見えそうもない。 「それにしてもさ、せっかくの夏休みなのに、毎日学校に来るって信じられないよ。ねぇ、(かえで)もそう思うでしょ?」 「仕方がないよ。今まで野球部の応援に駆り出されていたし、まともに補習もできていないんだから」  楓と呼ばれた彼女は課題をノートに写しながら答えた。  彼女、飛鳥(あすか)(かえで)は神奈川県にある神央(かみおう)学園高校・普通科の二年生。美しく整った顔立ち。白い肌に美しい長い髪。  しかし、当の本人はその外見には似合わず目立つことが苦手で、性格もどちらかと言えば大人しい、ごく普通の女子高生だった。  そんな楓に話しかけている生徒は、同じクラスの清水(しみず)涼子(りょうこ)。ショートカットで明るい性格、なんでも話せる楓の親友だ。     
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