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そして家に帰らず、夏弥の家に直行した。夏弥が俺にお願いってなかなかないから、夏弥のお願いに関しては俺はイエスマンだ。
「で、夏弥なんかあった?」
「最近、隼人と話せてなかったから…その、ちょっとだけ寂しくて…えへへ」
「ん゛ん゛ん゛っ」
隼人くんの口から隼人くんが出すわけがない声がした。
夏弥の可愛さプライスレス。耀との喧嘩で荒んでいた俺の心がめちゃくちゃ癒された。
「隼人、最近僕のこと避けてる…よね?」
「いや……あー、ごめん。夏弥、人気者だから近寄りがたくて」
俺の安寧のためになんて口が裂けても言えねえ。私情で夏弥を遠ざけてるもんな…。罪悪感はあるわけですよ、ええ。
夏弥は賢い。なんとなく俺が避ける上辺の理由は察していたのだろう。夏弥に怒っている様子はない。よかった、夏弥に嫌われたらしばらく学校行けなかった。
「なんとなくわかってたよ。隼人って、一歩下がって皆を見ている感じするから。人に囲まれるのあまり得意じゃないんだよね」
「あ……うん」
これは俺本来の性格。積極的に人に関わるのは不得意だし、転生前の俺は、他人と浅く狭い付き合いしかしてこなかった。隼人くんは意外と取り巻きが多かったし、得意な部類だったんだろう。
耀や礼央との罵り合いとかは隼人くんの毒舌補正で上手くいくのだが、人と打ち解けて話すのは苦手だ。だから耀や礼央に性格が悪いとか言われるのだろう。お前らには言われたくねえ。
「隼人が嫌なら全然しなくていいと思っているんだけど、隼人のことを悪く言う子達がいるからそれが悲しくて…」
「夏弥……その、ありがと」
「でも、軽井沢くんとは打ち解けているみたいで安心したよ」
「は?!それはない!」
「え、そう?」
夏弥の言葉を語気を強めて否定させてもらった。
夏弥は目をパチクリさせていた。不謹慎にも可愛いと思ってしまった。
このゲームがギャルゲーなら、速攻で幼馴染ルート突き進んでたわ。
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