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高等部についに進級しました。そして今は入学式の最中です。
姿勢正しく座り、壇上の少々頭が寂しいことになっている校長の話を真面目に聞いている新入生達を役員席から眺める。
俺も新入生なんだけどなー。何で役員席の方に座ってんのかなー。
時は遡ること数十分前。
入学式の会場に到着して自分の指定されているはずの席を確認したものの、座席表に俺の名前が書かれていなかった。たまたま通りかかった神楽坂先生にその旨を伝えると、何故か役員席の方へ案内されたのだ。
俺が疑問符を大量発生してるのに気付きながらも、神楽坂先生はにっこり素敵なプライスレススマイルをプレゼントして立ち去って行った。
「神楽坂先生ぃ…!」
自分でも随分情けない声を出したなとか思っています、はい。白いテーブルクロスが敷かれたテーブルの上に頭を突っ伏していじけてますオーラを放出してみたが、神楽坂先生は戻ってこなかった。
諦めて顔を上げてぼんやり新入生席に座る生徒達を眺める。エスカレーター式なせいで顔ぶれはほとんど変わらないが、片手で数えられる程度に見たことがない生徒がいる。
葵は…まだ来ていないか。方向音痴とかそういうドジっ子キャラではないから、単純に来ていないだけだろう。
「あ」
葵、来た。
ああ、うん。この学校には金持ちしかいなかったから、葵の庶民風の雰囲気懐かしいわ。
自分の席を探しているのか、キョロキョロしながら歩いている葵とばっちり目が合った。何となく笑って、手を振っといた。
葵はペコリと頭を下げて、俺から目を逸らした。役員席に座っているから上級生と思われた説あるな。
「宇都宮、いたのか」
「礼央サン、俺何でここなの」
「役員挨拶があるからな」
「初耳なんですけどォ~!」
思い返してみても連絡しろよって感じだわ。席がないから、俺退学になったのかと思って一瞬焦ったわ。
意識を式の方に戻して、隣で綺麗な姿勢で微動だにせず座っている光輝先輩へ目を向ける。俺の視線を感じたのか俺の方を見て、目を細めながら口角を少し上げた。
「っ、」
あっっっぶね!叫びそうだったわ!これだからイケメンは!
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