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教室に着くと、すでに結弦が登校していてチャイムが鳴るまで駄弁りながら時間を潰した。結弦にも葵のことを頼もうかと思ったが、俺の気持ち的に今伝えたくなかった。
HRが終わり、朝一の授業が体育のため体操服に着替える。流石金持ち校って感じで、芋ジャージではなくスタイリッシュなめちゃくちゃかっこいいジャージだ。
「隼人様、よくお似合いです!」
「そんなジャージ姿が様になってる?」
「隼人様は何を着てもお似合いです!」
「そう?ありがと」
結弦の頭を撫でて、体育館へ向かう。
今日はバスケだったかな。昔もバスケは苦手じゃなかったし、寧ろ楽しかったし少し楽しみだ。
準備運動をしてから、軽くドリブルとシュートの練習をする。昔の体よりも隼人くんの体は断然身軽で、以前よりもスポーツが楽しい。
なんだかんだ器用な隼人くんはそれなりになんでも熟せるから、何をしてもそれなりに全部楽しめるのだ。本当なんで悪役なの。
「次は赤と青の試合だ。両チーム、コートに入るように」
青チームの俺はそそくさとコートに入り、対戦チームのメンバーを確認する。
…耀と葵、か。あとは名前を覚えてない人らだ。
「宇都宮くん、いい試合にしよう」
「ま、お手柔らかに?」
運動神経皆無の葵が申し訳なさそうに耀を見上げている。しかも怪我はまだ完治していないだろうし、余計に足手まといになると思っているのだろう。
あの変態耀からすれば想い人に良いところを見せられる絶好のチャンスだから、対してというか全然気にしてないだろう。
ジャンプボールは俺と耀で、身長的な問題で赤チームのボールとなってしまった。いくらいろんなことに恵まれている隼人くんだからって、体格的な問題はどうしようもない。
赤チームの1人はすぐさま耀に渡して、耀が巧みなドリブルで切り進んでいく。
ハイハイ、運動神経がよろしいようで。でもさ、隼人くんも同じレベルなんだよ!
「あっ!」
「ハーイ、貰ってくよ」
スティールして耀からボールを奪う。そのままゴールまでドリブルし、レイアップでゴールを決める。
俺のシュートに観客の生徒達が湧く。耀を見つめ、にっこり嫌味たっぷりな笑顔を向けてやる。
「先制点いただきぃ」
「すぐに取り返す!」
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