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料理をもぐもぐしつつ下を見る。あ、夏弥と葵が接触した。シナリオ通りだ。
でも、やっぱり複雑だ。せっかくの食事を楽しめない。夏弥の交友関係が更に広がるのは喜ばしい。喜ばしいんだが、夏弥の一番の友人が俺から葵に変わるかもしれないと思うと寂しい。
「どうかしたのか?」
「んーん、ちょっと寂しいなって…」
「下に行きたいのか?」
心配げに話しかけてくれる光輝先輩に笑いかけて、何でもないように装う。ここで俺が接触しては意味が無いのだ。
葵にとって俺は“嫌な奴”でいなければならない。そうしないとストーリーが進行しないのだ。
「俺、一番の友達は夏弥…龍ヶ崎クンだと思ってるんです。その、大津クンに取られたら少し寂しいなって…」
「ヤキモチ、か?」
「ですね」
「宇都宮にも可愛いところがあるんだな」
クスクス笑う光輝先輩にふくれっ面をプレゼントしつつ、感情の波が落ち着いてきたのを感じる。
光輝先輩は凄い。いとも簡単に俺の感情の波を緩やかにしてくれた。そういえば、光輝先輩には嘘がつけない。億分の一の確率で嘘に成功したとしても、後で怖い思いをするのは目に見えているが。
きっと、光輝先輩は人の感情の機微を捉えるのが人の何倍も優れているんだろう。
「光輝先輩、疲れません?」
「ん…?やはりお前は視野が広い」
クスリと笑う光輝先輩に笑みを返して、残りのステーキを頬張る。うん、旨い!
食べ終わり、生徒会の方に突撃する。瀬良さんを除いて完食しており、礼央と迫田さんと勝海さんでお喋りに勤しんでいる。
「あ、うっつー」
「隼人ちゃん、食べ終わったの〜?」
「んふふ、美味しかったわよ礼央ちゃま?」
「ふん、当然だ!我が神宮寺が誇」
「あ、そういうのはいいです」
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