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「隼人!」
「あ、夏弥。はい、あーん」
「あーん」
ケーキを少しずつつついていると、俺を見つけたらしい夏弥が駆け寄ってきた。俺の食べきれなかったケーキを夏弥の口に放り込む。
うん、旨そうに食ってる。可愛いなぁ。
「大津クンと仲良くなれた?」
「うん、僕と勉強の話を対等に出来る人は初めてだったよ」
「そっか、大津クン頭良いしね」
「でも、僕の一番の親友は隼人だよ」
にっこり微笑みかけられて、思わず目を見開いてしまう。
バレてたのか。動作とか表情には気を遣っていたのだが、長年の付き合いでバレてしまったのか?恥ずかしいと思う反面、少し嬉しいのも事実だ。
「俺も、夏弥が一番の親友だ」
「うん、知ってるよ」
夏弥と笑い合って友情を確かめていると、俺の背後に突っ立っていた礼央が咳払いをした。夏弥はハッとした表情になり、礼央に対してぺこりと頭を下げた。
「俺を差し置いて談笑とはな」
「申し訳ございません、神宮寺様」
「俺様ムーブやめろ!」
「痛っ!」
夏弥につっかかろうとする礼央の脳天にチョップをきめて、礼央を沈静化する。親友の夏弥を守るのもまた親友である俺の役目だ。
夏弥はあわあわしながらも礼央の心配をしている。俺のせいだけど、夏弥の優しさプライスレス!
「宇都宮ァ!」
「礼央きゅん、次あそこ行こ!ドリンクバー!夏弥、俺達他の所行くから。パーティー、楽しんでくれ」
「うん、隼人も楽しんでね」
夏弥に手を振って、礼央の腕を掴んでドリンクバーへ移動する。甘い物を食べたから、コーヒーか何かで口の中をリセットしたい。
礼央は不機嫌そうに俺を睨みながらも、大人しく俺に振り回されている。なんだかんだ礼央は優しい。
「礼央きゅん、おすすめのコーヒーは?」
「これだ。我が神宮寺でも愛用している豆だ。芳醇な香りが素晴らしい」
「宇都宮はこっち。これ、コクがいいんだ。どっちの豆が好みか飲み比べしない?」
「ほう、いいだろう」
バリスタに2つのコーヒーを淹れてもらい、先に飲み慣れた自分の方を飲む。うん、いつも通り旨い。
礼央とカップを交換し、コーヒーを口に含む。
「…どっちか選んだ?」
「これは相当難しいが……こっちだな」
「じゃあ俺の合図で好みだったカップを指差して。せーの!」
俺、神宮寺愛用の豆。礼央、宇都宮愛用の豆。
「どっちも旨いんだけど、今の気分的にはこっちみたいな?」
「同意見だ。神宮寺愛用の豆が不味いわけがないが、今はコクを楽しみたい気分だった」
宇都宮vs神宮寺のコーヒー対決、引き分け。
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