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礼央や俺に話しかけてくる先輩同輩達と軽く話していると、耀からの熱い視線を感じて身震いする。お前は葵だけ見てろよ。
耀の方をちらりと見ると、にっこり人の良さそうな笑みを返された。俺も同じく隼人くんの素敵スマイルを贈り返す。終始笑顔で無言で嫌味を飛ばし合いつつ、生徒と歓談する。
「1年生ながら風紀副委員長を務められるなんて大変素晴らしいことだと思います!」
「この偉業、神宮寺様と東雲様以来ですよ!」
「俺、あの2人ほど優秀じゃないけどね」
先輩にはやたら話しかけられるが、同輩達からは一切話しかけられない。9年間の態度がたたったか?少し寂しい。
にしても先輩達フレンドリー過ぎねえか?流石にボディータッチとかはないけど、ミステリアスで通っている俺に気さくに話しかけてくる人は小・中等部では居なかったし。
「……俺に取り入っても、会長と委員長に近付けるわけじゃないんだけど」
「っ、え、それ、は…」
図星ね。
家柄で言えば俺も5本指に入るけど、神宮寺と東雲は別格だ。あの2人に気に入られれば家の格が上がる可能性は十分にある。
でも、その道具に俺を使おうとするのは不愉快だ。理解は出来るけど、納得は出来ない。
「そ、じゃあ俺は行くから。会長サン、行こ」
「ん?ああ」
気さくに話しかけてくるヤツは居なかったけど、俺に気に入られようと頑張っていたヤツなら居た。ソイツも俺と仲の良い礼央と光輝先輩目当てだったのは明白だったし、仲良くなろうとも思わなかった。
一概にそのせいとは言えないけど、俺が同級生と仲良くなる機会を逃す一因となったのは間違いない。逆にビビられるようになったし。
あー、自覚したら腹立ってきた。綺麗に着飾ってなければ暴れ出しそうなくらいだ。
「宇都宮、講堂から出るぞ」
「何で?」
「お前のためだ」
礼央に腕を引かれ、大人しく着いて行く。振り払っても礼央の力には敵わないし。
会長と副委員長が連れ立って歩いてるのは嫌でも目立つし、俺達が外に出たのはバレているだろう。
基本完璧な礼央がそれに気付かないわけもない。ただ、“俺のため”なんて生温い理由で職務を放棄するなんて予想外だった。
「頻繁に似たようなことが起きるのか」
「んー、そこまで起きないよ。でも、俺と礼央が親しいのがバレてからは増えたかな。勿論、宇都宮に取り入ろうとする人も居たけどね」
「そうか、それは悪かったな」
「礼央達は悪くないよ。俺を通して礼央と光輝先輩を見てるのは腹立つけど、取り入ろうとする行動は理解出来る。たまたま俺が名家で生まれただけで、あの人達くらいの家柄だったら同じことしてるかもだし」
まあ良い家柄なのに礼央に取り入ろうとしていた隼人くんが居たわけですが、そこは割愛。
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