少しの罪悪感とキスの雨

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「諏訪先生~、ここわからなかったんですけどぉ~。」 わざとらしい口調と、必要以上くっつける体。 わかりやすすぎる態度の女子生徒にも、表情1つ変えない男性教師。 諏訪恭一郎(すわきょういちろう)は、わりと女子に人気のある教師だ。 年は35と若くはないが、年よりは若く見える外見をしている。 が、別にイケメンというわけではない。 良くも悪くもない、平凡な顔。 愛想も良くない。 この学校には女子に一番人気の体育教師、水野がいる。 年も25と若く、イケメン。 愛想も良く、爽やかな体育教師に告白する女子生徒は多い。 『○年○組の○○さんと付き合ってるらしい』なんて噂も、たまに耳にする。 そんな爽やか体育教師がいるのに、何故無愛想教師の諏訪が人気なのか…。 「諏訪先生って一途そうだよね。」 「わかるわかる!ああいう無愛想な人こそ、彼女には激甘だったりするよね。」 そういうことらしい。 また授業はわかりやすく、質問に行けばどんなに時間が遅かろうときちんと教えてくれる。 そんな紳士な姿が良いんだとか。 教室の隅で諏訪先生に想いを寄せる女子生徒が、こういうところが素敵だとか、ああいうところがたまらないとか目を潤ませ頬を染めながら話している。 それを私は何でもないような顔で見つめた。 「あの子達の諏訪先生愛、凄いよね。」 「ははは…。」 「私はやっぱり水野先生のが好きだなぁ~。」 そう言って話しかけてきたのは、友人の茉子(まこ)。 「水野先生、この前3年のすっごい美人の先輩と噂になってたよね。」 「もう、美漓(みり)は何でそういうこと言うかなぁ。」 呆れた笑いを浮かべて言った私に、茉子は机に伏せって文句を言う。 『だってちょいちょい生徒と付き合ってるなんて噂される教師ってどうよ?』と言いたかったが、我慢して言葉を飲んだ。 「茉子の水野先生好きっていうのは、先生と付き合いたいっていう好きだったの?私はファン的な好きだと思ってたけど。」 未だ机に伏せっている茉子を慰めるように、頭を撫でながら言った。 「確かにファン的な好きだけどさぁ。ほら、テレビとかでアイドルの熱愛とか見てショック受けるのと同じ感じ!なんか微妙な気持ちになるの!」 拗ねたように口を尖らせて言う茉子が可愛く見えて、笑いながら謝った。
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