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さくら
一人の女性が片手に特殊な楽器を持って一本の木の下で静かに座り、目の前には大きな湖があった。
彼女はそれの波の音を聴いて、静かに楽器を構えて弓を引いた。
その音に合わせて木々が揺れて、何かが舞い散った。
そして、幾分が経ち彼女の演奏を終えると誰かが感想を言った。
「綺麗な音色だね」
その声に彼女は怯える所か素直に「ありがとう」と鈴のような声で返してくれた。
「君は何処かのお姫様?」
彼女は楽器を持ったまま答えてくれた。
「私は瑞希と言います。少し離れたところに私の屋敷があります」
「俺はルーガ…」と自分の名前だけ言うものの彼は瑞希に妙なものを感じた。
彼女はずっと目を閉じたままだった。
「桜さん。俺はどんな姿してるか分かりますか?」
ルーガの疑問を解消するべく少しカマをかけるような言い方をした。
すると、彼女は悲しそうな表情をして首を横に振った。
「ごめんなさい……何も見えなくて」
彼の予想通り瑞希は盲目だった。
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