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1. 夏、帝都大学助教授の来訪
盛夏の、カラリと晴れた日の昼下がり。
蝉の鳴き声を聞きながら、私はしっぽが三本生えている狐の石像を雑巾で拭いていた。石像は木陰にあるのだけれど、木陰にいても全然涼しさを感じられない。風が吹いていないせいだ。額や後頭部から汗のしたたる感触がして、何とも気持ちが悪かった。
(部屋の掃除に時間がかかることはわかってたんだから、ここの掃除を先に…朝の涼しいうちにやっておけばよかったわね)
私は汗をぬぐいながら少しだけ後悔した。
石像についていた泥やほこりが綺麗になくなって、私はほっとして石像を見上げる。
「今日も村の一日が平和でありますように」
私は石像に向かって小さくお祈りをした。
石像の狐はすっと背筋を伸ばして座り、正面を見据えている。三本のしっぽは天に向かって真っすぐ伸ばされていて、狐の体の倍ほども長いそれは狐の神々しさを一層引き立てている。いつ見ても、りりしく格好良い神様だ。
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