“ひとり“ぼっちの転校生

14/17
前へ
/30ページ
次へ
その頃、隣の家にある家族が引っ越してきた。 そこの家には彼女と同い年の男の子もいた。 しかし、性格は正反対で彼はどちらかといえば、とても明るく、皆の人気者のような、太陽のような子だった。 すぐにその男の子は近所の皆に可愛がられるようになった。 彼女のお母さんもその男の子のことをすごく気に入り、毎日のように呟いていました。 「なんで私の子はこんなに気持ち悪いの?あの子がうちの子の方が良かったわ。」 しかし、彼女には聞こえていなかった。否、あえて、聞かないようにしていた。 聞いてしまえば、自分の心が歪んでしまう、壊れてしまうと思ったから。 ある日のこと、その男の子は彼女にも声をかけてきた。 「ねぇ、君も一緒に遊ばない?きっと楽しいよ!」 「あ!おい!あいつ、つまらないからさそわない方がいいぜ!」 正直彼の行動の意図が全く分からなかった。 しかし、それからというもの、毎日彼が声をかけてくるようになった。 「あ!翠ちゃん!こんなところにいた!皆と遊ぼうよ!」 ある時は、 「翠ちゃんみっけ!一緒にかくれんぼしようよ!」 またある時は、 「翠ちゃん家見てみたいな!いい?」 そう、この子はどんなに無視をしても避けていても必ずしもと言っていい程見つけ出してくるのだ。 最初は勿論鬱陶しい等と思っていたが、ずっと話しかけられていくうちにそんな気持ちも薄れていった。 不思議だと思ったことを聞けば、嫌な顔ひとつもせずに答えてくれる。 悩みがあれば必ず聞いてくれる。 そんな彼に彼女は少しずつ心を許すようになっていた。 いつの間にか2人は親友となっていた。 どこに行くにも、何をするにも一緒だった。 その中で、一番二人が好きだったことは、二人で一緒に寝る事だった。 二人で寝ると、夢の中でも一緒にいるような気持ちになり、心が弾んでいくのだ。 しかし、一度に沢山の幸運を与えてもらった彼女は忘れていた。 そう、いつの時代も幸運と不幸は平等なのだ。 彼女はその事を知っていた。 しかし、”忘れていた”のだ。 今目の前にある幸せに浸りすぎて…。 幸運を貰ったと言うことは、それなりの代償がいるのだ。 彼が、ある日…還らぬ人となった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加