毒を食らわば

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「あぁ、白雪姫!  なんでこんな、哀れな姿に...っ!」 七人の小人達は、わんわんと声をあげて泣きました。 怒りんぼうの小人ですらも、恥も外聞もなく大泣きしています。 「最後のお別れをしないとね...。  彼女が大好きだったお花を、周りに敷き詰めてあげよう!」 いつも笑顔の小人までもが、ポロポロと涙を流しながら言いました。 そして彼らが白雪姫の為に花を摘みに行っている間に、白馬に乗った一人の王子が通り掛かりました。 「なんと美しい娘なんだろう...。」 王子は馬を降り、白雪姫の側に駆け寄りました。 そしてその頬にそっと手を触れると、うっとりと呟きました。 「息をしていない、死んでいる...のか?」 ごくりと、王子の喉が鳴りました。 そうです。 王子は死体しか愛せない、ド変態のクズ野郎だったのです。 周囲を見回して誰も居ないのを確認すると、目を閉じたままの白雪姫の唇に、自身のそれを押し当てました。 そして恍惚とした表情で、何度も何度もキスを繰り返しました。 「んっ...んぅっ!?」 その時です。 魔女の姿に化けた継母に貰った毒林檎のせいで仮死状態にあった白雪姫が、意識を取り戻りしました。 でも王子は白雪姫とのキスに夢中で、その事に気が付きません。 白雪姫は驚き、王子の事を思いきり突き飛ばしました。 「信じられないっ!  死んでる人間にキスとか、普通しなくないっ!?  キモッ、キモッ、キモッ!」 白雪姫は大声で叫びました。 「なんだ、まだ息があったのかっ!?  だから嫌なんだよ、生きてるヤツなんて...。  わーんっ!」 王子は白馬に跨がると、泣きながら逃げるようにして去って行きました。 こうして息を吹き返した白雪姫は、七人の小人達といつまでも楽しく暮らしましたとさ。 めでたし、めでたし!
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