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男性は、私の顔をまじまじと見つめる。
「舞……まさか本当に俺を忘れたのか?」
「忘れるも何も……」
見覚えのない人だ。知らない人なのだから忘れようがない。
「舞……」
少し悲しそうな表情をみせる男性。
その顔を見ていたら、思い出せない私が悪いようで申し訳ない気持ちがしてきた。
「あの、ごめんなさい。でも……どうしても……」
思い出せない。
思いだそうにもイケメンの知り合いは、今までに1人もいなかった。ただの1人もだ。
友達の男と言えば、高校時代からの青ちゃんだけだ。青木だから青ちゃん。青ちゃんは、はっきり言ってブーだ。なんなら、まだ、30歳なのに髪も薄くなってきている。
あと男っていうと、彼氏、一年前に別れた剛。剛は、爬虫類顔の全体的に痩せた男だった。
つまり、最近身近にいて思い出す男は、みんなイケテナイ。イケメンと知り合いになる機会も特別無かった気がする。
青ちゃんや剛のことは、覚えているのに目の前にいるかなりのイケメン男性のことだけを忘れるとは思えなかった。
ベッドに起き上がり、姿勢を正して改めてしっかりと男を見た。
「あの、彼氏って言うなら証拠を見せてもらえますか?」
「証拠?」
「はい」
「じゃあ……遠慮なく」
男性は少しかがんで、私の顎に指をかける。
近づいてくる顔は、躊躇いもなくまっすぐ私に進んできていた。
「あの!」
「なに」
「これから、何をするつもりか聞いてもいいですか?」
私の息がかかってしまうほど男性の顔が近くに見えていた。
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