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重要参考人
★
「ハル、まだ飲み足りない? ビールしかないけど……」
「ああ、ビールでいい」
ジャケットを脱いで、ハルはソファに座るとネクタイを少し緩めた。
「おつまみ、どうしよう? ピーナッツと枝豆しかないよ」
「豆ばっかりだな」ハルはキッチンに来て私を後ろからハグした。
「ハル……」
いきなりでかなり照れ臭い。
「豆ばっかりでもいい。舞がいれば」
「ははっ、私はつまみにならないけどね?」
「なるよ」
パクって私の耳たぶは、ハルに甘噛みされていた。
パクパクって何回か噛まれる。
「ハル!」
「やだ? 俺にじゃれつかれんの」
「やじゃないよ。ただ、恥ずかしい」
「誰も見てないし、聞いてない」
「でもさぁ」
「思い出さないから、俺が怖い?」
「ううん、そんなことはないけど」
ハルの体温を背中に感じていた。ハグしたままで私の手を後ろから握る。
指の間にハルの指先が絡まる。
「……切なくてどうにかなりそうだ」
「ハル」
「舞、俺を見て」
くるりと回転させられて、ハルを見上げた。
「俺を好きになれそうか?」
「え?」
「俺が彼氏だって思い出さないんだから、今から新しく始めるしかないだろ?」
まっすぐに私を見るハルの真剣な顔。
「俺を好きになれそうか?」
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