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 食堂に着くと、真っ先に水嶋の姿を探し、まだ来ていないことにひとまず安堵する。  時間が少し早い所為か、生徒の姿は疎らで、わざわざ席をキープしておく必要はなさそうだ。哉菜は適当な席に着き、見るともなしに前のテーブルの辺りに眼をやって、友人を待つ。  一年と思しき少女が二人、夕食をのせたトレーを持ってテーブルを一つ挟んだ席に着いた。哉菜と彼女たちの間のテーブルは空席で、白い長袖のTシャツを着た少女の大きな目と、時折はにかむように笑う口許が、もう一人の後頭部越しに見え隠れする。何を話しているのかまでは聞き取れない距離の二人をぼんやりと目に入れ、 (おなか空いてきちゃった。先に食べようかな)  と思っていると、こちらを向いて座っているその一年生と眼が合った。はっとした表情をして、次にどうすればいいのかわからないでいるその少女に、哉菜はにこっと微笑んでみる。すると一年生は、元々大きな目をさらに大きくして、嬉しそうに、恥ずかしそうに、小さく頭を下げた。そのまま見続けていると、彼女の行動を不審に思ったのであろうもう一人の少女が何か尋ねたらしく、興奮した様子で少し身を乗り出して、その子に何か話している。どういった内容の会話がなされているのか凡その見当がつく哉菜には、次に自分に背を向けて座っている方の一年生が振り向いて自分を見ることもわかっていた。果たしてそれが現実となり、再び微笑を浮かべてファンサービス。 「何たらしこんでんのよ」  真後ろの頭上から聞こえてきた水嶋の声に振り返ると、彼女は数メートル先で盛り上がっている一年生を見ていた。 「――そんなんじゃないわよ」  立ち上がって並ぶと、「じゃあ何なの?」と一瞥された。それには答えようがなかったので哉菜が黙って見返すと、それ以上続ける気がないのか、水嶋はさっさとカウンターの方へ歩き出した。  デミグラスソースのかかったオムライスとコンソメスープ、サラダをトレーにのせて席へ戻った哉菜と水島は、二人向き合ってそれらに手を伸ばす。 「そう言えば由華悧は? 一緒じゃなかったの?」  何も喋らずに半分ほど食事が進んだころで、ふと気付いて尋ねた。 「ああ、本読んでる。キリのいいところまで読んだら来るって」  軽い活字中毒の由華悧にはよくあることで、哉菜は「そう」と納得する。
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