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哉菜が食事を終える頃にやって来た由華悧が食べ終わるのを待って、さらにしばらくお喋りをしてから部屋に戻ると、紫月がベッドヘッドに凭れて、束になったA4サイズの用紙に眼を落としていた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
顔を上げて迎えてくれる彼女に応え、やり残していた英語の予習の続きをするため机に向かう。途中、紫月のベッドの足元に茶色の何も描いていていない紙袋が置いてあるのを見つけた。必要だったのはその中身なのだろう。ゴミ箱に入れるのを忘れられているかのようなそれを手に取り、
「これ、要ります?」
紫月に見えるように持ち上げると、
「あ、ごめん、いらない」
捨てようとしてくれているのだと勘違いしたらしい紫月が謝った。
「じゃ、もらっていいですか?」
「いいけど、何に使うの?」
ゴミ袋くらいにしかならないでしょう? とでも言いたげに訊かれた。
「ちょっと」
「そう。どうぞ」
にこっと笑って、答えにならない答えを返す哉菜に、紫月も同じように笑うと、それ以上の追求はせず、手許に眼を戻した。
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