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 よく思い出すのは、何気ない夕食の風景。 「もう、紗絵(さえ)、またこぼしてる。ほら、これで拭いて」  幼い姉がおかずをこぼしながら食べていると、前に座る母親がタオルを差し出し、姉が受け取る。それを見ていたら、母親が今度はこちらを向く。 「哉菜(かな)。ぼうっとしないの。ただでさえ食べるの遅いんだから、さっさと食べなさい。また遅かったら、あなたの分、後片付けしないわよ」  厳しく言われ、一所懸命ご飯を頬張り、吐きそうになりながら、なかなか飲み下せないそれらをお茶で流し込んだ。
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