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もう何年も脳裏に焼きついて離れないのは、両親の背中。
夜伽の場で黒い二つの背中は、ひと時も姉の遺体から離れようとしなかった。その背中を見ながら、親戚たちが集まった重苦しい空気の中、なかなか眠たくならない頭で思った。
(おねえちゃんが死んだ……。それじゃあ、×××××××××!)
今さら思い出したくもないその言葉は、父方の叔母に話し掛けられ、最後まで続かなかったように思う。
「かなちゃん、大丈夫?」
最初、意味がわからなかった。言葉が頭の中を素通りして、でも、何か欠片を残して、それに何となく気付いた瞬間、身体の中が熱くなった。そして叔母を見上げた顔の目と鼻も熱くなって、歯と歯がカチカチと鳴り、視界がぼやけて嗚咽が込み上げてきた。あとは、いつものように声を殺して泣いた。
叔母に手を引かれ、その部屋を後にする間際にもう一度見た両親の背中。記憶の中から抹消することはできないだろうか。
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