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窓側の列後ろから2番目。先ほどの騒動の間、ただ一人真面目な生徒よろしく、ちょこんと自分の席についていて、ただびっしりと汗を流しながら俯いていたやつ。今も机の模様に目を落としていて、まるで、私はこの模様の哲学的意味を考えるのに忙しいんです絶対に話しかけないでください、と言わんばかりに身動ぎ一つしていない。ぼくが観察していることなんて、気付くこともないように──そんなはずないのに。
ぼくの席は廊下側1番前。世界が反転でもしてくれない限り、普通に生活していたらそいつの様子を窺い知ることはできない。でも逆に、そいつからはぼくのことがよく見えるだろう。教室の対角に位置しているのに、なんたる不公平。現にぼくの視界からそいつが消えたとたん、はっきりと感じ取った。見られている。
思わず振り向きたくなる本能に抗いつつ、ぎくしゃくと自分の席に着く。高橋先生が生徒の名前を読み上げる中、鞄を机のフックにひっかけて、中身を机の中にしまい込む──と。
「──佐々木ー、佐々木圭介ー。……佐々木ー? 返事しないと欠席扱いにするぞー?」
「……はぁい!」
おざなりに返事をして、それが何かを確認する。
からっぽなはずの机の中に、一枚の紙きれが入っていた。
「……なにそれ、ラブレター?」
隣の真辺がそっと聞いてくる。
「……どこをどう見たらこれがラブレターに見えるのさ」
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