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それは、女子が授業中に先生の目を盗んで回している手紙のような、キャラクターの描かれた色鮮やかなメモ帳とかそういうものではなく、まるで、床に捨てられて埃と生徒の足跡でぐしゃぐちゃになった、ゴミ箱に捨てられる直前のプリントの一部分を破り取ったかのような、あまりにぞんざいで汚いものだった。
身を寄せて覗いてこようとする真辺から逃れつつ、折り畳まれた紙片を開く。
──紙きれには赤字でこう書かれていた。
『放課後、オリ室で待ってます。来なかったらもっとひどい目に合います。誰かに言ってはいけません。もし言えば…………』
なにこの禁句みたいなのは。差出人の名前はない。そんなものは必要ないと、この脅迫文を忍ばせた人物は──クラスメイトを偽りの情報で扇動し、暴漢とへ変えたアジテーターは、わかっているんだろう。
高橋先生の点呼はまだ続いている。
「真辺―─真辺琴──」
やがて一人の名前が呼ばれるのだ。
「水無月──水無月つかさ──」
「……はい」
ぼくはいよいよ振り返り、今小さく返事をしたクラスメイトを見つめた。教室でぼくとはほぼ対角線に位置している、窓側後ろから2番目に座っている女の子。
はっきりと目があって。
水無月つかさがじいっとこちらを睨み続けていたなんてことは、説明するまでもないのだった。
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