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大学の出逢い〔平成〕 1-1 櫻と慧の出逢い
1 櫻と慧の出逢い
――一九九三年、私の記念日。
「初めまして。入会希望なのですが、いいですか?」
四月十二日の月曜日、早速、心理学が休講だった。
二時位だ。
どうしようかな?
よし!
これは、チャンスかも知れない。
一年生の時に、退学を考えたのだもの。
決行しよう!
そして、張り紙を見て、部室を覗いたのであった。
私は、黒い眼をまんまるにした小柄で痩せた長い黒髪をポニーテールにし、辞書が沢山入ったピンクのリュックを背負い慣れて、羽大アニメーション研究会の部室をちろりっと覗いた。
「初めまして。俺は、絹矢慧です」
ノックして扉を開けると明るく自己紹介してくれる男性がいた。
「失礼します。私は、夢咲櫻です。宜しくお願いします」
静かに時間が止まったのかと思った。
これが、出逢いであった。
夢咲櫻と絹矢慧の。
細長い部室の中には、突き当たりの窓際に座った青いシャツと銀縁眼鏡の彼しかいなかった。
逆光線に浮かぶシルエット。
静穏な中、散った桜が少し舞い込んでいた。
「掛けてよ」
木の長椅子を勧められた。
櫻は、気恥ずかしくハイウエストの茶のスカートを直して腰掛けた。
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