プロローグ 0-1 生きる櫻

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プロローグ 0-1 生きる櫻

  1 生きる(さくら)  ――一九七七年、四月。 「うわあ……! 幸花(こうか)小学校の桜って綺麗なんだね! お堀に、垂れ桜なんだね、おばあちゃん。入学式がもっと素敵になったね」 「そうだねえ……」  写真を撮ってと赤いランドセルを直した。  黄色い帽子も忘れなく、さっと被り直した。  そして、ちょっとばかり背伸びをした。 「さっちゃんのお名前も綺麗で可愛らしいでしょう? 夢咲櫻(ゆめさき さくら)ちゃん」  母方の祖母、美濃部(みのべ)ハナだけが付き添って来ていた。 「いつも良い子ですね。きっとさっちゃんのお願いが叶いますよ。楽しい学校で楽しくお友だちができますよ……」 「お写真パシャしてね」  お祖母ちゃんが指で四角を作ってくれた。  写真の撮り方が分からないのだ。 「いいですよ。はい、チーズ」  その代わり、スナップを二枚、胸に焼き付けた。  風に応えて垂れ桜が囁く。  ざざざざ……。  ――ようこそ、一年生。   ざざざざ……。   ――楽しい学校へようこそ。  ざざざざ……。  ――お友だちと遊んで、お勉強をしましょう。  桜の花が強く吹かれて、ひゅるりと巻き上がる。
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