プロローグ 0-1 生きる櫻

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 ボブの黒い髪やチェックの紺のスカートがふわふわと乱れた。  そんな風の悪戯を気にしないで、タタタン、くるくると校庭で花の中を夢を見るように櫻が踊る……。  垂れ桜が、風のロンドに合わせる。  ゆらゆら……。   たたたん。     ゆらゆら……。      たたたん。  ゆらゆら……。   たたたん。     ゆらゆら……。      たたたん。  ……さっちゃん、どうしたの?  さっちゃん、そんなに踊ってどこへ行くの?  学校はこっちですよ。  お祖母ちゃんと行きましょう。  入学式はどうするの?  ああ……。  これは……。  夢?  ああ……。  これは……。  幻?  そうだ。  夢であり、幻でもあるんだ。  今は、あのチェックのスカートは小さくなっている。  それにあの桜は東京のもので、もう雪国に進学したのだもの。  もう、お祖母ちゃんはもういない……。  私が羽理科(はねりか)大生の時に亡くなったんだった。  お祖母ちゃんが暴れるからと、病院で拘束されていたっけな。  命って何だろう。  人は生まれ、そして亡くなる。  赤ちゃんとして生まれ、精一杯の人生の終焉を迎える。  生きるって何?  死ぬって何?
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