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上り口の横にある受付カウンターで会計処理をしていた父親の源一は怪訝そうな顔をして丸刈りの頭を向けた。
「矢だと?」
めんどくさそうに出てきた彼はその矢を掴むと思いっきり引き抜いた。
「まったく、どこのいたずらだよ。」
「綺麗な矢だね、ちょっと見せて」
源一の手から矢を取るとじっくりと矢を見た。紫のタスキはとても滑らかな生地で指で触ると柔らかくてとてもよい心地がする。
「すごく良い生地だ」
「そんなことより、結構深いな…この傷…」
看板を撫でながら源一は傷の見定めをする。修理しなければならないほど矢の傷は深かった。
「へ…」
生地を触っていた梨花の指にしゅるりとタスキが絡みいた。
「え、なんなの…」
ぽやっとしている梨花も訝しむ顔をしてタスキを見た。
するとタスキは指と指の間から梨花の体内へとするすると入って行き、あっという間に消えて溶け込んでしまった。
「ええ!!」
「なんだ、どうした?」
「タスキが、タスキが消えちゃった!」
「どこに」
「私の体の中に!」
「うんなバカなことあるか、その辺に落ちたんだろうよ」
話半分に聞いた源一は周りを探し始めた。
「ん、落ちてねぇな」
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