序章

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朝の商店街はこんな早い時間から活気に満ちている、といっても、住人が活気に満ちているのでお客さんがというわけではない、県道を挟んで両脇に長く延びている商店街は7時から営業を開始する店が多いのだ。こんな田舎で7時から商店街を開けても誰もきやしないと考えがちだが、温泉街からのお客さんが浴衣姿でふらふらと寄って行ってくれる。無論、そんな早朝から起きて来るのは、じい様、ばあ様が多いので活気ではなく、ゆったりとした早朝の時間を味わうことができる。 もう一つ、商店街が朝早くから開く理由がある、それは飯田線の貨物輸送が朝の6時頃には中井侍駅につくからだ。 主要道である151号線から中井侍まで2時間以上の道のりをかけて来なければならない、それだと輸送時間がかかりすぎてしまうので電車貨物が店の頼りとなっている。新聞から生鮮食品などを一括で運んでもらい、中井侍駅で貨物列車ごと切り離していくのだ。そうやってもう何十年も村は生活している。県道の改良も中央構造線の軟弱地盤などの諸問題で一向に進展していない。 「おはよう、小狐」 「おはよう、祐一」 八百屋の4代目になる予定の八百祐一が丸刈りの頭にスポーツバックを手に持って店から出てきた。ちなみに小狐というのは梨花のあだ名だ。 「いつもより遅いな?」 「うん、ちょっとあってね」 祐一は駆け込みの常習犯である、彼とこの場であってしまったということは、駆け込みになるのだろうと梨花は考えて辟易する。 「ダッシュだな」 さわやかな笑顔で言ってくる祐一に辟易する。 「言わないでくれる?」     
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