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序章
「何でもございません」
再び痛みをこらえている祐一の方をポンポンと叩く。
「小狐怒らせると後が怖いからね」
「そんなに怖くないよ!、それに今朝の方が怖かったんだからね」
ふと朝一番のことを思い出して梨花は身震いした。ついついタスキが入った手をみてしまう。
「なにがあったの?」
「どうしたんだよ?」
いつもの梨花でない姿にふざけていた2人も心配そうに声をかけた。
「うん、実を言うとね、朝出て来る時にうち小狐の看板に矢が刺さってたの」
「矢って弓道とかで使う矢のことか?」
「うん」
「どんなんだ?」
「え?」
「どんな色か言ってみろよ、もしかして白木に紺色の羽じゃなかったか?」
突然、人が変わったように祐一が問い詰めてくる。まるで現場を見たかのように矢の形を当ててきて梨花は足を早めて祐一と間をとる。
「どうして知ってるの!?祐一が打ち込んだの?」
「そんなわけあるか。俺が深夜にランニングしているのは知ってるだろ?」
「うん」
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